アザレア
頭に置かれたまま、動かなくなった俺の手を不思議に思ったのだろう。

「……しゃ、社長?」

「ん?」

「その、手が」

「あぁ、悪い」

メイの声を合図に、メイから離れた掌が急速に体温を失っていく。

そんな俺の指先を見つめるメイの瞳は僅かに揺れていた。


それは同情なのか、それとも――…


固唾を飲む俺を見上げたメイが、怖ず怖ずと口を開く。

「……あの、聞いても良いでしょうか」

「うん?」

「えっと、社長は何故ここに……?」

「っ、」

そして――遂に来た。
来てしまった、この時が。
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