死への救急搬送
私が話しているのを聞いていた一番奥に座っている責任者が立ち上がり私の方へ向かって歩いて来ました。
私は彼を見て驚きました。
昔私が陸上競技をしていた頃の知人でした。
「あれ。小西さんじゃないですか」
「こんにちは。お久しぶりです。元気でしたか」
「びっくりしました。こちらにおられたとは」
「今少し聞いていましたが、どういう件ですか」
「透析患者だった家内が脳内出血を起こしたのですが、M市救急隊の搬送事故で手術が遅れてしまったのです」
「手術の時点で命は持たないだろうと告げられたのですが奇跡的に命は助かりました」
「その後後遺症などのリハビリをしていましたが徐々に悪化して二ヶ月半後に力尽き亡くなりました」
「最初はM市救急隊に調査を依頼して謝罪と透析患者の搬送改善を要求し話し合いをしていたのです」
「しかしM市救急隊が組織防衛をしてまともな回答をしてくれません」
「R病院の先生も家内の搬送には問題があるということでM市救急隊へ申し入れをすると同時に県の協議会で搬送改善の会議を提案してくださったのです」
「会議の内容を県のK管理課に問い合わせしたのですが会議の結果を簡素に書いた公文書が届き、あとの話し合いはM市とするように伝えられました」
「M市救急隊だけが起こした事故だからM市と話すようにとのことです」
「そういうわけで現在までの経過と質問書を市長宛に持ってきたのです」
「消防は市長の管轄になると伝えられましたから、こちらへ持ってきました」
「あぁ・・・これか」
小西さんは何か知っているようでした。