紫陽花のキミに。
がっしり掴まれた左腕。
教室から出ていこうとする俺に、
まるで子犬のような瞳を向けてくる。
「な…何だよ…」
* * *
「へ〜、結構いいマンションなんだ」
俺は頭を抱えながら
ふらふらと頷いた。
「余ってる部屋は?」
キョロキョロと部屋の中を見渡している。
そんなもん
「あるわけないだろ」
そう、俺は言い放った。
「は?」
結衣の体がピタリと止まった。
「俺ん家、LKだし」
ゆっくり振り向く結衣
「嘘…?」
「ホント」
その後、結衣が
誤算だった…。
とか言ってへこんでたのは
言うまでもない。
「ったく、俺を紹介した奴誰だよ…」
ポツリとつぶやいた俺の言葉に耳を傾けて、口を開いた結衣。
「長沢隼人よ…あいつにいい人いないか聞いたの!」
なんでまた、あんなのに…
(長沢隼人とは、悟にカテキョを紹介した人のこと。)
「なんでOKしたんだよ…」
「だって…」
口籠もる結衣に視線を送った。