不機嫌に最愛



お風呂から上がって、冷蔵庫からペットボトルの水を飲み干して一息吐く。

時刻は、午後10時。

常識的に考えて、一人暮らしの女の家に男が訪ねてくる時間ではない。

……というか、梓希先輩が私の部屋に一人で来たことなんて今まで一度も無いのに、本当に来るの?


ーーガンッ!!!


突然、玄関の方からした物音にビクリと肩が強張る。

な、に……?

足音をたてないように玄関へと近付きながら、それと同時に心拍数も上がっていく。

恐る恐る、ドアの覗き穴を見てみるものの、そこには外灯に照らされた無人の風景しかない。


いつも見慣れてるドア前の風景が、夜の暗闇とさっきの衝撃音以降静寂に包まれているのが相まって、……怖さで足が竦んでそこから動けなくなってしまった。

ドアの向こうの現状を早く確認した方がいいと思うのに、体は言うことを聞いてはくれないようで、玄関の廊下に座り込む始末。

……梓希先輩、ではないと思うんだけど
でももしかしたら。

そんな気持ちが勝ってしまったのを後悔したのは、震える体を自ら支えるように片手で抱いて玄関の覗き穴を見た瞬間だった。


 







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