不機嫌に最愛



私のイヤな予想通りに来てしまった、交代してきた美容師の望月さん。

間違いなく梓希先輩で、この雰囲気は怒っていらっしゃる。

でも、不毛な片想いなんて、もう終わりにする。



「ハイハイ、無理ですから。大人しく、俺だけに髪切らせとけ」

「……横暴、」



……なのに。

梓希先輩は、文字通りに横暴と言える言動で、私の髪に指を滑らせる。



「萌楓の髪に触っていいのは、俺だけでいいんですー」



拗ねたような口調に、不意を突かれて驚いてしまった。

……鏡の中の梓希先輩の視線が、真っ直ぐに突き刺さってます。

さっきの美容師さん、ゴメンナサイ。

本当に怖かったんですね……



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