私の子猫くん

~side 杏~


「……どうしたの?もう会いたくないんじゃなかったの?」






……電話口で彼はまるで私のことを嘲笑うかのようにそう言った。






「……私はね。」






「……どういうこと?」







「コウが……私の大切な人が亮に会いたいって言うから。」







「……へぇ。よっぽど自信あるんだね。杏のこと奪い返されないって。」






「……そんなこと考えられるような、醜い心の持ち主じゃないの。ただ、真っ直ぐに自分の気持ちを伝えたいだけだって言うから。」






「……ふうん。僕も会ってみたくなった。」







……亮が今どんな顔をしているか分かるような気がする。






……私は少し悪寒を感じた。






「とにかく、6時に私の部屋に来て。それだけだから。」





私は、その悪寒から逃げるように携帯を切った。



< 131 / 209 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop