『短編』恋するハーモニー
「もう!」
「やっと止まってくれた」
廉はにんまり笑うと、「一緒に帰ろうよ」と七海の自転車のハンドルを取った。
「俺が押していってあげるから」
「……じゃあ、いいよ」
そっぽを向いてそう呟くと、廉が鼻で笑うのが聞こえた。
「なによ」
「ううん」
廉は、一生懸命笑うのをこらえている。
「かわいくないな、とか思ってるんでしょ」
七海がそう言うと、
「まあ、そんなとこかな」
と、前を見つめたまま笑った。