『短編』恋するハーモニー
「じゃ、あさってな」
廉の家の前に着くと、彼はリュックを肩にかけ軽く手を上げた。
「イブに練習するなんて、先生もどうかしてるよね」
そう言うと、七海は自転車にまたがった。
「まあ、なんにも予定のない俺はありがたいけどね。……自転車乗ってくの?」
廉は、さっきのよろよろした七海の姿を思い出して、またくすりと笑った。
「乗ってくの。私はまだここから自転車で10分はかかるの。意地でも乗っていきます」
きっぱりとした口調で答える七海に、廉は「はいはい」と子供をなだめるように言った。
「じゃあね」
七海は地面を蹴って自転車を走らせると、やはり風にあおられてふらふらしていた。
その後姿を見て、廉は思わず吹き出してしまった。