【黄昏の記憶】~ファースト・キスは封印の味~
優花の力はこの世界には必要ないもの。むしろ害になるものだから、封印されたって構わない。
――だけど。
優花の迷いを見透かすように、晃一郎は、静かに言葉を紡ぐ。
「お前の力とパラレルワールドの記憶は、切り離して封印することはできないんだ。力を封印すれば記憶も同時に閉ざされる。悪いな。それは俺の力ではどうしようもない」
ううん、と静かに頭を振った。
分かっている。
これは、三年前に一度経験したこと。
でも、分かっているけど、心がついて行かない。
言葉もなく俯いていると、
ツイっと、腕を引かれ、晃一郎の懐に抱え込まれた。
抱きしめるでもなく、ただすっぽりと包み込むような、優しい抱擁。
「あーあ、このまま攫ってっちまおうかな」