彼と彼女と彼の事情
じっと見つめていた瞳が微かに動き、唇から言葉が漏れた。 


「キスしていい?」


隼人がこんなふうに、キスに同意を求めるのは初めてだった。


これまでなら、何も言わず、強引に唇を奪っていたから。


隼人の問いに返事をする間もなく、自然と二人の唇は重ね合わさった。



  …………………………


この半年間の忌まわしい出来事を払拭するかのような隼人の優しいキス。 


私の勘違いかもしれないけど……大切に、愛おしく扱われてるような気がしてならなかった。


私の身体の奥の方が、敏感に反応したのを感じた――。



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