ワイルドで行こう
食堂で母と共にデミグラスソースがけのオムライスを頼んだ。
琴子の隣で母が妙なため息をこぼしている。……察知されてしまったかな。英児も言っていた。どんなに娘が笑顔で取り繕ってもお母ちゃんにはなんでもお見通しだって。でもだからこそ、笑っていれば大丈夫だとお母ちゃんも安心してくれる――と。
まだ涙が滲みそうだった。本当に彼にもらったものが、離れていても琴子を支えてくれているから。
お待ちかねのオムライスがやってくる。
「ここのオムライス、ひさしぶり」
でも、どうしてかな。普通の味になってしまった気がして。
苦しいからこそ、なんでもないものがとっても大事に思える、感じることが出来る。そんな一口だった。
だから琴子は思った。
――『会いに行こう』。
琴子がいてまとまる話もまとまらないだろうと、離れていたけれど。彼女がいない時間に会いに行こう。五分でも良い。あの人を独りにしないで、傍に行こう。
―◆・◆・◆・◆・◆―
ただいま休暇中の琴子。母と自宅に戻って夜を待つ。夜遅く、本当に英児が寝てしまうような夜中に会いに行こうと思った。たぶん、彼女も帰っているだろう……。いるかもしれないけど。
それに心配なことがひとつある。英児の携帯電話を破損させたほどの荒っぽさ。琴子の持ち物もなにかされているかもしれない。置きっぱなしにしてきた小物や服はどんなことをされても良いけれど、あの『ジャケット』に何かされていたらそれだけは絶対に許さない――と思った。
彼女もどうするのか。琴子と偶然会った後の夕方、また琴子の境遇を知った後。あの顔で、龍星轟でまた再会するのだろうか。
夕方、携帯電話が鳴る。着信音がびっくりするメロディで琴子は思わず電話主の表示を確かめてしまう。
一瞬、迷った。でも、思うところがあり琴子は電話に出てしまう。
「はい」
『俺、元気だった』
そっとため息をこぼす。今更、なんだというのだろう。でも琴子には、この彼が今になって連絡してきたのは何故か、なんとなく予感していた。
「なに。雅彦君」
年明けに別れたデザイナーの彼だった。