ワイルドで行こう

 
 そんな女子会も無事に終わり、その日の夜、琴子は一人できちんと無事に帰ってきた。
 女友達にどのように婚約者となった英児のことを報告したのか、または友人達の反応などを、嬉しそうに教えてくれた。
 そして二人で結婚式の準備をするため、プランナーとの話し合いも開始した頃――。
 
「おう、タキ。今日のご新規さんなんだけどよ」
 外回りから帰ってくると、留守を任せている矢野専務が報告をしてくれる。
 留守の間の来客に、連絡、などなど。その専務が新しい顧客シートを社長デスクに落ち着いた英児に差し出してくれる。
「あれ。また女性の新規が来たのか」
「そうなんだよ。若いOLさんだな」
 近頃、根っから車好きの男ばかりが集まるこの店に女性客が増えた。女性だけではなく、ちょっと違う層の男性客も。最初は不思議に思っていたが、徐々にその訳も判明。そして今回も――。
「今回も同じだ。この彼女と話していたら、三好デザイン事務所の取引先の社員さんだってよ。どうして店に来たのか知ったのかと尋ねたら、やっぱり琴子が取引先にお前のゼットに乗って訪問してきたのを見たのがキッカケだって言うんだよ」
「またか」
「ちっと今までと違う客層だなと思ったら、琴子か三好ジュニア経由だもんな。俺達が走らない、行かない、訪ねない。今まで開拓しなかったところから来ているのはそういうことだが、お前の車を走らせることも、あのステッカーも、まだまだ宣伝効果があるんだと改めて実感するな。琴子が店長の車で今まで店長が走らなかったところを走らせる、取引先に乗っていく。または愛蔵のセリカ乗車を復活させた三好ジュニアも、龍星轟ステッカーを貼った車であちこち取引先へ乗り回してくれているのもあるんだろうな。このご新規の女の子も琴子が乗り始めた『滝田ゼット』を見る前から、街中のスポーツカーに貼られている龍のステッカーはよく目について気になった――と言っていたしよ」
 それで、この新規の若い女性は車検を依頼することになったらしい。本当に龍星轟にとっては、新しい客層。ここで出来れば今までにない客層を捕まえておきたいところ。
「この子も言っていたぜ。『あの静かな琴子さんが、かっこよくフェアレディZに乗ってきたもんだから、すごく刺激されちゃった』ってさ。車検のついでに、ちょっとでもお洒落な車にするにはどうすればいいかって相談も持ちかけられて、とりあえずイメージを作ってきてくださいと女性車用アクセのパンフレットを渡しておいたからよ。若い者同士、次回はお前が相談にのってやれよ」
「うん、わかった」

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