ワイルドで行こう



「こ、こんな、ワ、ワンピース。き、着てみようかなー」
「うん。絶対、似合うと思う。このテイスト。琴子はお嬢スタイルが似合うけれど、他のタイプも着こなせるから、小鳥に似合う服を探してくれると思う。恥ずかしがらずに母と娘なんだから、素直に相談して集めてみたらいい」

 いや、母ではなく。側にいる大人の男性が、既に『小鳥にはこれが似合う』と見抜いてくれていた? 

 もう、それだけで、小鳥の胸がいっぱいになって張り裂けそう――。

 お兄ちゃんは、私のことをよく知ってくれている。ただの男っぽいやんちゃ嬢で捨て置かないで、小鳥が女らしくするならこれだと思うと……。見て考えてくれているのだって。

「この雰囲気を着こなせるようになったら。お前、ぐっと大人っぽくなって、すぐに恋人ができるよ」
「こ、恋人……なんて」

 なってほしい人はひとり――。そう言いたくなって、でもさすがにおじさんにはまだ言えなかった。

 だけどおじさんは鉛筆を動かしながらも、側で立ってデザインを眺めている小鳥を、ちらりと見て笑った。そのなにもかも分かっているかのような親のような笑みにドキリとする。

「恋人にしたい男には、絶対に自分の女らしさをアピールすべき。これ、おじさんからの激励戦闘アイテムの進呈だ」

 出来上がったデザイン画をさらっと小鳥に差し出してくれる。

「あ、ありがとう。参考にする……」
「自分は女らしくないなんて思って、女を放棄するような逃げのファッションをするなよ。やっぱり女なんだから。お前がそうなるのを楽しみにしている。そして変な服を着ていたら、おもいっきりけなしてやるからな」

 うわー。これからは雅彦おじさんを訪ねる時は、服装もズケズケ言われるようになるんだ! 小鳥は震え上がる。







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