ワイルドで行こう



「行ってこい。お前がどこまでも走れるようにしておいたからよ」

 先日、整備したばかりのMR2を今日もまた整備していたのは何故なのか。小鳥も察した。それも父の儀式なのだろう。

 これから自分一人で飛んでいく我が子。そんな子離れをするための言い聞かせをしながら、どこも悪くない娘の愛車を手入れしてくれていのだろう……。

 小鳥は再度、運転席のドアを閉め、ハンドルを握る。

「お父さん、行ってきます」
「おう。きばって行ってこいや」

 バイトも、恋も、そして小鳥のこれからのなにもかも。父はここから小鳥を飛ばしてくれる。
 MR2のアクセルを踏み込み、エンジンを高らかに響かせると、父も満足そうに見送ってくれる。
 

 俺の小鳥。
 どこまでも飛んでいけるエンゼルにしておいたからよ。
 もうどこでも飛んでいきな。
 

 そんな父の声が聞こえたような気がした。
 小鳥は強く頷き、サイドブレーキを下げる。
 ぎゅっと鳴るタイヤ、踏み込むアクセル。この龍星轟から飛んでいく。
 

 龍星轟の皆が言う。
 

 うちの青いエンゼルは、可愛い翼の天使だと思ったら大間違い。
 ソニックブームをまとって音速ですっ飛んでいくから気をつけろ。
 

 もう、小さな鳥じゃない。

 

 ■ リトルバード・アクセス 完 ■ 




*** お知らせ ***

ファミリア編はこれにて完結。スローな連載になりましたが、娘の恋までお付き合いくださり、有り難うございました♪

次回は、サイトでは先行で公開している番外編【 ハッピー・トス 】をお届けします。
琴子の後輩である『紗英ちゃん』が、『友人主催の披露宴』を企画。武智君と幹事を担当します。女子大学時代の琴子友人&英児友人の元ヤン軍団が集合^^; 本家サイトでは2話構成の短いお話です。

その後、本家サイトでもこれから公開予定なのですが、ワイルドで行こうをオール完結させるための『オールアップ編』を短くお届けする予定になっています。琴子と英児の新婚当初のお話で締めくくろうと思います。

あと少しのお付き合い、どうぞ、よろしくお願いいたします^^

 ◇ 茉莉恵 ◇







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