ワイルドで行こう



 やがて、滝田社長の周りに男達がどんどん集まってくる。挨拶は皆先ほどと同じ流れ。『おめでとう』から始まり『女房の琴子』と来て、琴子さんのしっとり上品なスマイルの挨拶にちょっと驚いた元ヤン兄貴達が『タキにはもったいねえー』、『うるせー。もう俺の女房』の繰り返し。

 それを琴子さんも嫌な顔ひとつもせず、ひとりひとりに合わせてにっこり笑っている。それを紗英も微笑ましく眺めていた。

 それにしても――。招待状を作成してる時点で紗英も社長の人脈を実感していたが、本当に滝田社長の知り合って多い。

 あっという間に、滝田夫妻がスーツ姿の男達に囲まれてわいわい賑やかに。……いや、やっぱり騒々しいなあと紗英は苦笑いを密かにこぼす。

 とにかく、元ヤンらしき兄貴達がいちいち滝田社長をからかって、そして滝田社長がムキになっての大騒ぎ。そして最後は男達が結束したみたいにどうっと『わはははは!』と豪快に笑い飛ばす。もう会場がそれだけで熱くなっている気がしてくる。

 見ているうちに紗英も感じ取った。琴子先輩同様に感じ取った。
 ――『いまは落ち着いた大人の男性に見えても、必ずどこかにその片鱗があるの』。
 つまり『元ヤンキー』っていうムード。

『滝田社長の場合は、どこで感じたんですか』

 琴子先輩に聞くと、彼女がちょっとだけ考えて。

『些細な仕草とか名残はいろいろあるけど。とりあえず。すぐ眉間にしわを寄せる目つき、と、靴下かな』

 ――靴下? どうしてそこなのかと思ったが。赤や紫、黄色など、そんな色選び柄選びがなんとなくそんな雰囲気を残しているのだそうで。

 そしていまそんな男性達を眺めている紗英も、むんむんと感じていた。靴下で分かる人もいる。靴下が普通のセンスの人でも髪型で、あるいは胸元の金色のアクセサリーを強調させているとか。いろいろ。

『でも。武智さんだけ、その雰囲気がないのよね。でも英児さんに高校時代の写真を見せてもらったら……』

 事務所では毎日ひとりだけワイシャツネクタイ、スラックス姿で車屋のジャケットを羽織っている眼鏡の事務員。紗英もおなじく武智さんだけは、あんなにムードがわかりやすい『元ヤン兄貴軍団』に囲まれていても『同じ仲間だった』とはとても思えない。

『もう、武智さんの高校時代の写真を見てほんと驚いちゃった』

 『はあ』と、とっても深いため息をついた琴子さん。

『英児さんは、やっぱり……って姿で逆に笑えちゃったんだけれど。武智さんはある意味、衝撃だったわね』





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