ワイルドで行こう
元ヤンの滝田社長。高校時代は金髪に赤メッシュ、剃り込みおでこに鶏冠のようなリーゼント。いまや『クラシックヤンキー』と言われる黒い学ラン制服を着込んで仲間とヤンキー座り、カメラ目線がこれまた『上目遣いのガンとばし目線』だったそう。
その隣に、滝田社長に負けない金髪リーゼント、黒いサングラスに白マスク。そして片耳にずらっと金リングのピアス。琴子先輩がショックを受けたのはそんな在りし日の武智さんの方だったという。
『なんでも。中学時代は秀才って言われていたみたいで。県内名門校を受験したらしいけれど、解答用紙真っ白にして出したんだって』
なんてエピソードまで出てきてびっくりの紗英。その高校、確かに県内一の秀才が集まるところ。そこを『拒否』したというのだから。
そうして反抗してなんとか入った学校が滝田社長がいた並の高校ということらしい。そこから『遅い反抗期』がやってきて、写真の通り。そこまで突き抜けたとのこと。
『英児さんも時々言うんだけれど、武智だけはちょっと違っていたって。心から金髪になりたいわけでもないし、サングラスを取り払ってしまうと、目つきとスタイルが噛み合っていない。根はやっぱり優等生。煮え切らないところもあったから、元に戻るのも早かったし、俺はそれで安心した――と言うわね』
――という人だったらしい。
そこまで聞いたら、なんだか納得。
それに今でこそ、いまどき男子風のヘアスタイルの武智さんだが。くるんとした毛先がふわっと耳を隠している黒髪が時たま風や動作でなびくと、その時に耳の端をくっきり縁取るピアス穴を紗英も見つけてしまう。
『ピアスもうつけないんですか』
思い切って尋ねたことも。すると彼は、ちょっと照れるように大きな手で耳を隠して笑う。
『ああ、これ。せめて二、三個にしておけばいいのに。やりすぎたなーって後悔しているんだ。もうピアスはつけないけど、当時のリングは大事にとっておいてあるよ』
何故? と聞いてみる。
『うーん、穴を開けたのは後悔しているけど。あそこまで思い切って自分を主張したのは後悔していない。だって大人になったら絶対に出来ないじゃん。あんな我が侭』
その道を通ってよかったよと彼。その上――。
『高校時代がいちばん楽しかったな。思いきり良くて細かいことを気にしない元気な兄貴と、なんでも相談できるダチが出来たから。いまでも彼等と付き合いが続いているしね』
だから、タキさんにはいちばん幸せになって欲しかった先輩だ――と。仕事も誘ってくれてすごく嬉しかった。とまで言ってくれた。
それを後日、琴子さんにもこっそり報告。すると琴子さんもとても感激していて『英児さんにもこっそり知らせておくね。きっと喜ぶと思う』と、やっぱり奥さんになるってそういうことなのかな。滝田社長の喜びが自分のことのように嬉しかったようで、あの琴子さんがとびきりの笑顔だった。
どうやら武智さんにとって、高校時代とはかけがえのない思い出のよう。紗英は、先輩の滝田社長のためにテキパキと友人達を集める段取りをしている彼からひしひしと感じさせてもらっていた。