ワイルドで行こう

「なんでタイヤをとっちまっているんだよ!」
「依頼どおりにしてるだけだ」
 仕事をきっちりとするときの親父の顔で言われ、英児はますます困惑した。
 その親父がすることを見ていると、矢野じいが真新しいピカピカのタイヤを転がしてきた。
 そのタイヤのメーカーと品名を見て、英児はまた卒倒しそうになった。
「ど、どうしてそのタイヤ!」
「ちなみに、これからこのホイールもはめることになっている」
 矢野じいの足下にあるピカピカで渋いイカしたホイールをみても、英児は卒倒しそうになった。
「な、なんで。それがここにある。それは、俺が俺が、これから買おうと思っていたけれど、いろいろあってずっと先送りにして我慢していたやつじゃないか」
 すると矢野じいがまたなにかを企んでいるような、人を弄ぶ時のような嫌な笑みを浮かべ、ホイールを手に持った。しかもそれの匂いをくんくん嗅いでいる。
「だよな。俺にはチョコレートの匂いがしねえんだけどよ。琴子がこれがチョコレートだって言い張るんだわ。おかしいよな」
 また、ガツン――としたのが来た。
 タイヤとホイールがチョコレートだとお!
 つまり、それが琴子からのバレンタインの贈り物!?


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