ワイルドで行こう
「琴子、おまえ、いまからゼットでもう一回でかけてこい!」
「え、どうしてですか」
「琴子さん、そうして! ああ、そうだ。コーヒー豆がなくなりそうだから買ってきてよ!」
夫のいつものお出迎えもなく、社長補佐の二人が尋常ではない慌てぶり。琴子は眉をひそめる。
「そうですか。じゃあ、その買いに行ってきますね?」
いぶかりながら、もう一度、ゼットの運転席に戻ろうとした時だった。
「なんだよ。琴子の迎えは俺の楽しみなんだから、あっち行け」
英児の声が聞こえた。
「このクソガキ、おまえこそ、あっちに行っていろ! 琴子にそんなもん見せるんじゃねえよ!」
「そうだよ、タキさん。どうしてそうなったんだよ~」
現れた夫の前で、専務と武智さんが隠すようにして大きな手振り。
でも、琴子はもう見てしまった。
「英児さん……、それ……」
「おう。お帰り、琴子」
にぱっといつもの白い歯の爽やかな微笑みを見せてくれた夫、だけれど……、琴子も指さしてちょっと震える。