ワイルドで行こう
 ふと琴子も彼の目を探して見つめる。彼の瞳の中にまだ不安そうな色合いを見てしまう。なんでもきっぱり決められる人なのに。どうして。琴子にこんなに触れてくれるのに、こんな時だけ迷いを見せるの。
 だから琴子からスカートのホックを外して床に落とした。落ちたスカートの輪の中から歩み出て、英児にぴったりと抱きつく。
 彼の深い吐息が琴子の耳に落ちてくる。ホッとしたような、そして感激したような吐息だと思いたい。でもそれは信じても良いようで、彼がきつく琴子の頭を肩先に抱き寄せ頬ずりをしてくれた。
 灯台の光が二人を映したり消したり……。そんな暗がりの狭い部屋で互いの肌を探る。
 英児は琴子のブラウスのボタンを外し、琴子は彼のティシャツをめくり上げて熱い肌を露わにし、男の胸先に大胆なキスをしていた。
 ――あの夕立を思い出している。雨に透けた彼の肌。そして今日も汗と体臭と、メンズトワレの残り香。そして今日は、体温。彼の温度を『唇』という名の『触覚』が、新たに彼のモノとして琴子の五感に記憶する。
 記憶したいから、優しいキスなんかじゃない。それこそ、もう琴子は思い通りに欲するままに吸っていたんだと思う。匂いだけじゃイヤ。体温を知っても物足りない。貴方をもっと知りたい。貴方の肌の味だって――。それでも初めてだから、まだ恥じらいが残っていて微かに舌先で味わっただけ。
 彼の『嘘だろ』という小さなうめき。琴子がこんなことするはずない……と思ったのか。『こんなこと、したらいけなかった』なんて尋ねようとは思わなかった。その代わり、向こうを本気にさせてしまったみたいで、彼にブラウスを荒っぽく左右に開かれてしまう。レエスのランジェリーが露わにされた姿で窓横の壁に押さえつけられる。
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