愛を餌に罪は育つ
笑い合い和やかな雰囲気の中、美咲が俺から体を離し寝室へと姿を消した。


ラフな服装に着替えるんだろうと、煙草を吸いながら暫く待っていると、美咲がそのままの服装で戻ってきた。


浮かない顔をして手にはクリアファイルを持っている。



『てっきり着替えに行ったのかと思ったよ』

「これを見てもらえますか?」



クリアファイルを受け取り中の紙を取り出すと、それは住民票と戸籍謄本だった。


戸籍謄本を見て、最近の美咲の様子が可笑しかった理由が分かった。


記憶がない上にこんな事実を知ってしまったんだ、悩むのも無理は無い。



『おいで』



足の間に美咲を座らせ、お腹に手を回し抱き寄せた。


きつく抱きしめてしまえば折れてしまいそうなほど華奢な体だ。



『これを見て、どうしたいと思った?』

「本当の両親に会いたいと思いました。だけど――」

『怖い?』

「――はい。両親は私に会いたくないんじゃないかと思うんです」



美咲の震える体をさっきよりも少しだけきつく抱きしめた。


これ以上辛い思いをすれば、悲しい思いをすれば、美咲の心は壊れてしまうかもしれない。






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