愛を餌に罪は育つ
美咲が体を捻り後ろを向くと、そのまま俺の背中に腕を回し抱きついてきた。


こうして美咲の様に他の女性に甘えられたことは無い。


正直こういうのは面倒臭いと思っていたから、相手も俺の気持ちを察していたんだろうと思う。


甘えられて守ってやりたいと思えるのは、本気で好きだからかもしれない。



『私が調べる、美咲の本当のご両親の事を』

「――――」

『何か分かったら直ぐに教える。二人で解決していこう』

「でも――」



美咲の表情を見れば何を考えているのか大体分かるようになってきた。


今の戸惑っている顔も俺を思ってくれての事だろう。



『私がそうしたいんだ。君の全てを知りたいし、全てを支えたい。美咲が一人で抱えこんでしまう方が辛いんだ』

「――ありがとうございます。ううん――――ありがとう、秋」



照れ臭そうな表情で“秋”と呼ばれ、嬉しさのあまり俺は美咲の後頭部に手を回し顔を近づけた。


だが、唇が重なりそうになったところでハッとして動きを止めた。



「いいの、キスして――お願い」



俺の目を直ぐ近くで真っ直ぐ捉え、潤んだ目で美咲はそう言った。


初めてじゃあるまいし、数え切れないほどしてきた筈なのに、美咲との初めてのキスは信じられないほど心臓が煩かった。






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