愛を餌に罪は育つ
気がふれたかのように何度も何度も顔を左右に動かし、部屋の中を見渡すが、何が起こっているのか認識できない。


ジワジワと滲み出てきていた嫌な考えが核心に近付くかのように、生々しい臭いが鼻を刺す。


そして、見まいとしていた床に恐る恐る視線を落とすと血だらけの物体が三体転がっていた。


そう、この部屋を赤く染めているのはペンキでも絵の具でもない。


只の悪ふざけであって欲しいとどれだけ願おうと、間違いなく血だ――。


恐怖からなのか悲しみからなのか、目に涙がたまり視界がぼやけていく。


三人とも顔や体をズタズタにされ、見るも無残な姿にされている――特に顔を集中的にズタズタにされており、もはやそれは顔ではなかった。


寄り添うように横になっている二人の左手の薬指にはシルバーの――シルバーだったはずの指輪がはめられている。


お父さんとお母さんに間違いないと思った。


それならもう一人は――お兄ちゃん――――?


震える体を同じく酷く震える足で支えるかのようにゆっくりと、着実に前へと進めた。


覚束ない足取りのせいか何もない床の上で躓いてしまい、後一歩で辿り着くというところで私の足は力尽きるように崩れ落ち、その場に座り込んでしまった。








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