愛を餌に罪は育つ
テレビからコマーシャルが流れ始めた。


コマーシャルって朝見るのと夜見るのとじゃ違う気がする。


朝の方が爽やかな感じがする。



「社員旅行って何処に行くの?」

『さぁ、何処だろうな』

「その顔は絶対知ってるでしょう!?」

『今はまだ教えられないが、女性なら好きな場所だと思うよ』



澄まし顔でお味噌汁を啜る秋をどれだけ見詰めようと、教えてくれそうになかった。


残念。



『美咲』

「何?」

『今晩は実家に行かなければいけないから、夜ご飯は俺の分は用意しなくていい』

「そっか、ゆっくりしてきてね」



秋は仕事で帰りが遅くなる事も珍しくない。


だけど接待や会食などの理由がない限り、ご飯の用意をしていれば必ず食べてくれている。



「そう言えば秋は兄弟とかいるの?」

『弟がいる』

「そうなんだ、秋は面倒見がいいから弟か妹がいそうだなとは思ってた」



きっと弟さんも魅力的な人なんだろうな。


そんな事を思いながらだし巻き玉子を頬張っていると、秋が私の顔をジッと見ている事に気が付いた。


首を傾げ見返すと秋は色気のある笑みを見せた。


まだ朝なのに、笑み一つで夜のような妖艶な雰囲気にしてしまう秋には本当に敵わないなと思う。






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