愛を餌に罪は育つ
私をギュッと抱きしめる秋からは、心配してくれていた気持ちが痛いほど伝わってくる。


申し訳なくも思い、不謹慎ながら嬉しくも思った。



『何処に行っていたんだ、携帯もずっと電源が入っていないから心配した』

「心配かけてごめんなさい」

『いいんだ、無事で良かった』



秋の背中に腕を回し、シャツを握りしめた。


大好きな温もりと匂いに包まれ、心が和んでいく。



『食事は?』

「まだ、かな」

『何か作ろうか?』

「ありがとう。でも、食欲ないから大丈夫」



体を離すと心配そうな目で私を見詰める秋。


私はそんな秋を安心させるように微笑んだ。



『体調でも悪いのか?』

「違うよ。とりあえずリビングに行こう?」

『あぁ、そうだな』



家の中だというのに、秋は私の手を握り歩き始めた。


絡められた指にピタッとくっついた掌。


ホカホカしている感じがする。






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