愛を餌に罪は育つ
ソファーに座ったはいいが、何故か私は秋の膝の上に乗せられ、向かい合うように座らされた。


十代の時ならまだしも、流石にこの歳でこの体勢は若干恥ずかしい。



「あの――秋?」

『ん?』

「恥ずかしいんだけど――」

『あれだけ心配したんだ。これくらいいいだろう』



そう言われ思わず口篭ってしまった。


恥ずかしいけど嫌じゃない。


秋の大きな手が私の頬に触れる。



『何をしていたのか聞いてもいいか?』

「――今日、会社に朝陽が来たの。翔太君が来てるって受付から連絡がきて、ロビーに行ったら朝陽がいた」

『翔太の名前を使って美咲を呼び出したのか』

「うん」



秋は眉間に皺を寄せ目を細め、顔をしかめた。


だけど私と目が合うと、優しく頬を撫でながら微笑んだ。



「仕事が終わって朝陽と会う約束をしたの」

『今まで彼と一緒にいたのか!?』

「ううん、二十時前くらいまでかな。それからは――一人で公園でボーっとしてたら帰るのが遅くなっちゃった」



私の言葉に呆れたような顔を見せる秋。






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