愛を餌に罪は育つ
笠原さんは一度目線を落とし深呼吸をすると、私の目を捉え口を開いた。



「お気づきかもしれませんが、梓の首に刃物で付けられた様な傷が薄っすらと付いているんです」

「――――」



私は笠原さんの話を聞いて驚いた。


梓の首に傷が付いている事に気付いていなかったから――。



「もしかしたら誰かに刃物で脅されて遺書を書いたのかもしれません。それで文字が震えていたんじゃないかと思うんです」

「じゃあ、その人が遺書も睡眠薬も強要したって事ですか!?」

「私のただの推測でしかありませんが、恐らくは――」



まさか朝陽がそこまでしたの?


でもどうして――。


どうしてそこまでする必要があるの?



「あの、梓が飲んでいた睡眠薬は病院でしかもらえないんですか?それとも同じようなものって市販で売られていたりするんですか?」

「普通のルートであれば、市販ではまず買えないでしょう。病院でも今は別の危険性が低いものを処方するようにされているので、余程症状が酷くないと処方されないものです」

「――――朝陽なら――朝陽なら手に入れる事ができるかもしれません」



笠原さんは私の言葉にハッとした表情を見せた。


朝陽は歯科医だから、病院関係者に友達や知り合いぐらいいるだろうし、薬を手に入れるルートだって知ってるかもしれない。






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