愛を餌に罪は育つ

知らない首筋

梓は順調に回復していき、今では普通に会話ができるようになっていた。


ただ、部屋で倒れていた時の事を聞こうとすると、未だに取り乱してしまうため直接本人からは何も聞けないままでいる。


梓本人が当時の事を忘れたがっているのか、一時的にその時の事を忘れてしまっていて思い出そうとするとそういう症状になってしまうのかは分からない。


だけど、笑顔を見せてくれる。


今は笠原さんのマンションで一緒に暮らしているから、梓にとっては病院よりも安心できて心が休まる場所だろう。



『休憩しなくて平気か?』

「うん、大丈夫だよ。秋こそ平気?ずっと運転してる」

『俺なら心配ない。運転は好きだからな』



今日は秋と初めて二人で外へデートしに来ている。


付き合い始めてからは何だかんだごたついていて二人で出掛けられなかった。


それに近場だと会社の人に見られる心配もあって、その辺でデートをするわけにもいかなかった。


だから今日は一泊で温泉にでも行こうという話になり、今秋の車でホテルへ向かっている。


本当は旅館に止まりたかったけど、セキュリティー上の問題を考えてホテルに泊まる事になった。


せっかくゆっくりしたくて温泉に来てるのに、落ち着かない空間で過ごしたくないからしょうがないかと自分に言い聞かせた。






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