愛を餌に罪は育つ
翔太君は庇う様に私の前に立った。


緊迫した空気の中朝陽が口を開いた。



『今までのは全部、彼に無理矢理言わされてたんだよね?そいつが僕たちを引きはなそうとしてるんだね』



狂気の様な歪んだ目を向けられ私の体は更に強張った。


狂ってる。


全身から冷や汗が流れ出る。



『美咲ちゃんッッ逃げてッッ!!!!』



苦しそうな翔太君の声にハッとなった。


気付けば目の前で翔太君と朝陽が掴み合いをしていて、私は逃げるどころかその様子を呆然と立ち尽くし見ていた。



『美咲ちゃんッッ!!』



そうだッッ助けを呼びに行かなきゃッッ!!


大通りまで行けば誰かが助けてくれるかもしれない。


翔太君に背を向け走ろうとした時、翔太君の呻き声が聞こえまた直ぐに後ろを振り返った。



「ッッ翔太君!!」



地面に倒れている翔太君の体を揺さぶりながら声を掛けるが、目を開けてくれない。


心臓も動いてるし息もしてるから気を失っただけ――だよね――――。


足音が近付いてきて、その音は私の直ぐ傍で止まった。


ゆっくり顔を上げると、そこには歪んだ笑みを見せた朝陽が私たちを見下ろしていた。


私はここで殺されてしまうんだろうか――そう思った時、誰かに体を乗っ取られる様な感覚に襲われた――――。






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