愛を餌に罪は育つ
夜食事の用意をしていると、エプロンのポケットに入れていたプリペイド携帯が震えだした。


もう暫くは秋は帰ってこないだろう。


タオルで手についた水を拭き取り、通話ボタンを押し携帯を耳に当てた。



『明後日、二十二時、最後のカフェ』



意外と落ち着いている朝陽の声。


最後のカフェ――別れ話をした場所の事だろう。


別れを切り出した場所でまた始めようって事?


あの出来事は彼にとってきっとあってはならない出来事。


なかった事にしたいのかもしれない。



“トンッ――”



携帯のマイクの辺りを強めに一度叩くと、電話は直ぐに切れた。


通話時間も短い方がいいからね。


今日はもう電話はかかってこないだろうと思い、携帯の電源を切り鞄の底へしまった。


そしてご飯の用意を再開し、私はいつもの様に秋の帰りを待っていた。






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