愛を餌に罪は育つ
秘書室に置いているシュレッダーに朝陽からの手紙を通していると、秘書室のドアがノックされ秋が入ってきた。



「お帰りなさいませ。何かお飲みになりますか?」

『あぁ、コーヒーを頼む』

「かしこまりました。直ぐにお持ち致します」



笑って答えると秋も柔らかく微笑み返してくれた。


以前よりも雰囲気が柔らかくなったような気がすると思うのは、恋人同士になったからかもしれない。


笑顔のまま副社長室に入っていく秋を見送り、シュレッダーの電源を切ると、何事もなかったかのように自席に腰を下ろした。


いつからこんなに堂々と笑える様になったんだろう。


いつからというか、元からこんな性格だったんだろう。


記憶が戻れば戻る程、今は淡い色合いだけど色鮮やかになろうとしていた空間がモノクロになっていく。


モノクロに染められてしまう前にどうにかしなければ、憧れた華やかな場所が手の届かないところへ行ってしまう。






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