愛を餌に罪は育つ
私は包み込むように秋の体に腕を回した。


凄く優しい人だから、きっとたくさん心を痛めているに違いない。


他人の事でも自分の事の様に感じ、考えられる人だから――。



「理由はどうであれ、死を選んだのは彼女自身なんだから秋のせいなんかじゃないよ」

『――あぁ』

「秋が責任を感じる事なんてないんだよ」



秋は私から体を離すと鼻と鼻が触れそうな程の距離で微笑んだ。


まだ慣れないこの距離に、私の心臓は煩く暴れ始めた。



『美咲』

「な、何?」

『愛してるよ』



ッッ!?


鏡を見なくても顔が赤くなっているだろうと思う程、顔がカッとなり熱くて堪らない。


顔を反らしたくても秋の綺麗な指が許してはくれなかった。



『今すぐ食べてしまいたいが、今はこれで我慢するとしよう』



そう言ってやんわりと触れ合う唇。


激しさを増していく口付けは私の全てを溶かしていくようだった。





< 386 / 390 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop