愛を餌に罪は育つ
彼は真剣な顔になり、落ち着いた声でこう言った。



『ここ座ってもいい?』

「は、はい」



私の前に腰を下ろすと彼は優しく微笑んだ。



『俺は宮沢 翔太。改めて宜しくね、美咲ちゃん』

「――――」

『美咲ちゃん?』

「信じてもらえると思ってなかったので――」

『俺の知ってる美咲ちゃんは嘘をつくような子じゃないからね』



信じてもらえて本当に良かった――。


宮沢さんの言葉が嬉しくて自然と笑みが溢れた。



『記憶喪失って事は朝陽の事も覚えてないの?』

「朝陽の事知ってるんですか?」

『知ってるもなにも俺と朝陽は高校の同級生。だから朝陽の彼女の美咲ちゃんとも仲良くなったんだよ』

「そうだったんですね」



私と宮沢さんは朝陽を通じて仲良くなったんだ。


宮沢さんは朝陽と同級生なのに、宮沢さんの方がしっかりして見える。


朝陽は少し童顔だからかな?



『記憶を無くしてても癖は変わらないんだね』

「癖?」

『人といても自分の世界に入っちゃうところ』



そんなつもりはなかったんだけど人からはそう見られてたんだ――。


自分の癖って指摘されると案外恥ずかしい。






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