10年越しの恋
読谷村にある小さなシーフードレストラン。

海沿いに張り出したデッキで食事が出来る雰囲気のいいお店。

店内には外国人の姿が多い。


「あっという間だったね」


「明日にはもう帰るんだもんな」


運ばれてきた料理から私のお皿にたくさんのエビを乗せてくれる。


「やった! エビ大好き」


「ほんと好きだよな、そんなに上手い? 全部食べていいよ」


いつもこんな風に甘やかしてくれる。

私の食べられないものを知らない間に食べてくれていたり……。

私は雅紀の優しさに頼りっ放しだった。


「こんなに長い時間一緒にいたの初めてだよね」


「そういえばそうかな」


「でも全然嫌じゃなかった」


「どういう意味?」


「あのね、結婚相手を決める時には二人で少し長めの旅行に出かけた方がいいんだって」


「ふーん、でもなんで?」


「結婚したら毎日1度は顔を合わすし、二人でいる時間も付き合ってる時に比べたら長くなるでしょ」


「うん」


「だから旅行で何日もずっと二人で過ごして、それでも喧嘩しなかったら一応の相性は合格なんだって」


「じゃあ俺は合格なんだ」


「まあちゃんが合格っていうんじゃなくて、二人の相性が合格?」


付き合ってもうすぐ5年目を迎える。

小さな喧嘩は何度もしたけど、二人で過ごす穏やかな時間が大好きだった。

二人で一つの人間なんじゃないかと思うぐらい、お互いの気持ちが近いところにあった。

「おじいちゃんとおばあちゃんになったらこんな風に毎日海が眺められる所に住みたいね」


「そうだね、いつかのCMみたいに。年をとってもちゃんと手をつないで歩く」


「うん、そんなのがいいね」


とても小さな、でも大切な約束だった。
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