10年越しの恋

薄氷の上で

沖縄から帰るとすぐに梅雨入り。

1年で1番嫌いな季節。

傘は邪魔だし、どんなにかわいい靴を履いても濡れてしまうのが嫌でおしゃれする気も失せてしまうから。

早く雨止まないかな…。

窓越しに灰色の空を眺めていたら机の上で携帯が震える。

「もしもし?」


「ゆうだよ。何してんの?」


「ぼーっとしてた」


「じゃあ駅前まで出て来ない? まさよも来るよ」


そんな誘いに乗って出掛けることにした。


金曜の夜7時の居酒屋は騒がしく、笑い声が絶えない。

一人先に座っているまさよの姿が見えた。


「お疲れ様」


「瀬名は何飲む?」


「とりあえずビールで」


すいませーん! 気の利くまさよが頼んでくれた。


「ゆうは?」


「もう少しで行けるってメール来てたよ」


「このメンバーで会うの久しぶりだよね」


「仕事はどう?」


「思ったより大変でほぼ毎日残業」


そんな話をしていたらゆうが到着。


「遅れてごめんね、それよりまさよ話って?」


「えっ? なに、なんかあったの?」


「いや、なんか相談があるから瀬名も誘って欲しいって」


「なになに、どうしたの?」


ゆうと二人体を乗り出すように聞いた。
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