ヒーロー
倉木ケントは、小学校からの僕の友達だ。



1年生から5年生まで、一度も同じクラスにはならなかったけど、僕の小学校は一学年に2クラスしかなかったから、普通に話す程度の友達だった。



ケントは体が大きくて、“ガキ大将”という言葉がぴったりだった。



よくイタズラをやらかしては、女の子を泣かせたりして、先生に怒られていた。



そんなケントを、一度も同じクラスになったことのない僕は、なんともいえない微妙な距離から、ただなんとなく眺めていた。







6年生になり、初めてクラスが同じになる。もともと共通の友達と遊んだりしていたこともあって、すぐにケントとは仲良くなった。



ケントと僕を含んだ10人くらいでスケートに行ったり、バーベキューをしたり、とにかくよく笑った1年だった。



卒業式も間近な3学期、ケントが突然僕に提案した。



“中学行ったら柔道部入れよ”


“えーっ?”


“いいじゃん、俺も入るから”



あの時は笑ってごまかしたのを覚えている。



今じゃ1週間柔道をやらないと体がうずくっていうのに。
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