私の彼氏
五月義隆

1

M市駅から北へ徒歩五分のところに、古びれた六階建てのビルがある。

その二階で、バー『サツキ』を経営するのが、五月義隆である。

深夜二時頃、一人の男が、そのバーを訪れた。

年の頃は四十五六といったところか。

「五月さんは今日はいてないのかな?」

と女のバーテンに聞いた。

「はい。今日はオーナーは来ないと思います。お客様は五月のお知り合いでしょうか?」

「そうだ。すまないが、すぐに呼び出してもらえないかな。大事な話があるんだ」

「わかりました。お客様、失礼ですが…」

「秋山、と言えば分かるはずだ」

「分かりました。すぐに電話します」

「すまないな」


女のバーテンは、調理場に設けられた電話機のもとに小走りでいった。

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