私の彼氏

3

その日以降、真由美も山崎も健介殺害事件の話をしなくなった。

この事件の真実は知らぬ方がよい、と二人とも感じていたのである。

しかし、二人の仲は今まで通りであり、互いに気にいった携帯小説などを教えあったりしていた。

――

『私の彼氏』が削除され、二週間ほど経った日の夕方。

山崎優子はコンビニで、一人の女性に声をかけられた。

「あら? まゆみさんじゃない?」

「……」

「こんばんは。まゆみさん」

誰かが、まゆみさん、と言っている。山崎が振り返ると、河合亜美がいた。

そして、ハッと自分が“まゆみ”であることを思い出した。

「こんばんは」

「何か、考えごとしてたのかしら?」

「エロいことを少々…」

「かわいいわね。今から何か用事あるの?」と聞いてきたので、山崎は「いえ。まったく」と正直に答えた。

「もしよかったら、少しお茶しない?」

「バーはいいんですか?」

「ええ。辞めたのよ。五月と別れるために」

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