Loving Expression ~愛を詩にのせて送ろう~
慣れない仕事に戸惑いながら、彼は今必死にキーボードを打っている。
このペースで2時間休憩なしで続けているのだから、精神的疲労は相当のものだろう。
なのに休まない。そろそろ休憩をはさまないとぶっ倒れてしまいそうだ。
「奏。どうしてそんなに急にやる気になったの?」
人気作詞家が自ら曲を作るなんて前代未聞だ。
彼はスペースキーを叩いてから、くるりと回転いすを優雅に回してこちらを向いた。白眼が充血している。
堺は自分の腕時計を見た。夜中の一時を過ぎたところだ。
「気まぐれだ」
乾いた目をぱちくりさせる。
長時間パソコンに向かっているのだから、乾いていて当然だ。
「気まぐれで人はそんな頑張れないわよ?」
コンパクトミラーを取り出しつつ彼女は言い返した。