Loving Expression ~愛を詩にのせて送ろう~


背もたれに肘をかけ、彼は足を投げ出した。いつも以上にくたびれいるように捉えた。


「………堺さんは恋をしたことはあるか」


「はぁ?あるっちゃぁあるわよ」


昔のだらしない男たちを思い起こして堺は顔をしかめた。


「恋は素晴らしいものだと僕は思う。特に恋をしはじめた直前」


彼は目頭を押さえた。


「溢れきれんばかりの思いを、今のうちに書き留めておきたいんだ」


そうそっけなく言うと、彼はまた椅子を半回転させ、仕事を再開し始めた。


「………だいぶのめりこんでるわね」


堺はくすくすと大人びた笑い声を静かに上げた。


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