+tears+◆季節 春◆
私の願いは虚しく消え、お父さんは話し始めた。

「よく聞きなさい。
お父さんの仕事の都合で、引っ越すことになった。」




………えっ……
引っ越しってここを離れるってこと?


お母さんが私にBOXティッシュを差し出す。
それが歪んでた。
泣いてるの?私が?

「待って。ここに残ることはできないの?」
声が震えるのを抑えて聞いてみた。
今の時代、単身赴任だってあるはず。

お父さんの代わりにお母さんが答えた。
「ここに。は無理よ。市内もしくは県内だったら考えられ…」

「それじゃだめなの!!!!」
私はリビングを飛び出した。
行くところなんてない。

自分の部屋に入って背中で扉を閉めた。

そのままずるずると座り込む。
誰も追いかけてこない。

私は床に伏せて泣いた。

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