世界の果てまでキミと一緒に。



「そんな事、言うんじゃない!お前に死なれたら俺が困るんだ」



千尋様の目にも涙が溜まってる。


千尋様と藤堂さんの間には、見えない何かで繋がっているんだ。


お互いがお互いを信頼し合ってる。



「さっ、社長、こんなことしている場合じゃありません。桜子さんを連れて早く……」


「わかったよ。お前の頑固さには負けたよ」



千尋様は力なく笑った。



「頑固は生まれつきです」



藤堂さんも力なく笑う。



「桜子、立てるか?」



私がコクンと頷くと、千尋様は私の体を支えるように立ちあがった。



「藤堂、これだけは約束してくれ。何かあったら必ず逃げろ。いいな」


「私は大丈夫です」



藤堂さんはそう言って、涙を流しながら笑顔を見せた。



「桜子、行こうか」



千尋様がスーツケースとボストンバッグを持つと、私の体を支えるように階段に向かって、ゆっくりと歩き出した。



「お気を付けて」



後ろから藤堂さんの声が聞こえ、歩きながら振り向くと、藤堂さんは笑顔で手を振っていた。


そして、千尋様と私は逃げるように家を後にした……。





< 162 / 179 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop