SONG 〜失われた記憶〜
第一章 ――立ち止まる思い――

BAZZ


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 七月七日、今日は七夕。彦星と織姫が年に一度だけ会うことを許された大切な日でもあり、私の二十回目の誕生日でもある。なのになぜか私は機材に埋もれた作業場で曲作りに没頭していた。仕事だから仕方ないのだが、やはり一人で過ごす誕生日は心虚しい。お祝いのメールは何通か貰っているのだが、直接訪ねて祝いに来てくれる者など誰一人いない。冷たい奴等だ。――まあ、曲作りの邪魔にならないように、と配慮してのことだろうが。

 私の名前は箕山 詩、二十歳。二年前にメジャーデビューを果たしたロックバンド、BAZZのヴォーカリストでそれなりに売れているんじゃないか、と私は思っている。ギター、ベース、ドラム、キーボード、ヴォーカルの五人組で中学時代に結成され、当時から作詞作曲は全て私が手がけており、編曲やプログラミングなども私が行っている。それは今現在も変わらずで私が動かない限りBAZZは前に進めない。責任重大だ。

 ふと、窓の外に目をやる。いつの間にか辺りは夜の闇に包まれ、優しい月明かりと街灯が町並みを照らしていた。



 ピンポーン。

 只今の時刻は午前零時に差し掛かろうとしている。こんな遅くに一体誰だろう? 後数分で私の誕生日は虚しくも終わってしまうというのに…。

 赤坂にあるこの家は地下と一階がプライベートスタジオになっていて、極親しい友人や仕事仲間にしか教えていないので滅多にチャイムは鳴らないはず。メンバーはお上品にチャイムなど鳴らさず、窓から不法侵入してくる。迷惑な話だ。

 インターホンでその姿を確認すると、そこにはよく見慣れた顔が映し出されていた。モデル並にスラッとした体型と黒髪のパーマがかったお洒落なその髪型はいつもとなんら変わりないご様子。名を栗山 義人という。二十七歳。行きつけの美容院‘An’のオーナー兼店長で私の担当美容師でもある。

 七歳年上の兄の学生時代からの親友で私もよく一緒に遊んでもらっていた。それは今でも変わりなく、こうして突然訪ねて来るのは珍しいことではない。そして私の初恋相手でもあり、その思いは今でも色褪せることなく、心の中に留まっている。決して叶うことはないけれど…。

「…間に合った?」
「え?」

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