わかれあげまん
その時シャワールームの扉の向こう、更衣ロッカーに人の気配がし、柚は訝しげに首を傾げた。
あれ?
サチヨ先輩かな?
そっか。
たしか先輩の下宿って一駅向こうだし、ここでシャワーして店に直行するつもりなのかも…
誰にせよ待たせちゃ悪いよね。
手早く髪を拭き、バスタオルを身体に巻きつけて柚は扉の取手に手を掛け、開け放った。
「すいませぇん、シャワーお先でし…」
目線を上げたその先で、柚は凍り付いた様に目を見開いたまま動きを止めた。
「!?」
彼女の思考が状況に追いつくのに手間取っている間に、目の前に立つ渡良瀬が涼やかに微笑み歩み寄って、そして無遠慮に柚を抱きしめてきた。
「…ふぇっ!?」
「・・・やーっとつかまえた。」
耳元に唇を寄せ、落とされる低い囁きに柚の背に電流が走った。