わかれあげまん
「ちょっ!!せっせんぱい、何!?なんで!?」
狼狽に声を裏返らせて叫び、慌てて身を引こうとしたが、渡良瀬の長い腕がまるで蔓植物のように柚の身体にしっかりと絡め取り、そして開いた方の掌で彼女の口をムグッと塞いで。
「しーっ。大きな声出すなよ。…フロアにいる奴に聞こえるだろ?」
「っ…!!?」
眉根を寄せた柚の顔が、わけのわからない感情のせいで一気に紅潮した。
「んンっ…!」
もがきながら何とか両手で自分の口を塞ぐ渡良瀬の手の甲を引き剥がし、そしてまたシャウトする。
「…ここ女子更衣室っっ…!」
抗議しようとしたそのぷっくりとした唇に再び降りて来たのは、今度は掌ではなく。
渡良瀬の唇だった。
「!!!!」
拘束されたまま奪うように与えられる強引なキスはただでさえ混乱している柚の思考を強かに揺さぶる。
必死に逃れようともがいていた柚なのに、やがてその蕩けそうに熱い口付けに酔わされ、力を殺がれて行き。
とうとうずるりと脱力した小さな身体を、渡良瀬は腕で支えながらそっと顔を離した。
「柚が悪いんだぞ。…全然取り合おうとしないから。」
クスリとした笑みとともに耳に届いた掠れ声は悪魔さながら。