わかれあげまん
ピロティの屋根の下には、LED街灯の青白い光が差し込んでいて、談話室よりは格段に明るい。
眩みそうになる目を細め、そこで柚はようやく哉汰の輪郭を視界に収めることが出来た。
濃色のダウンジャケットを纏い、自分の腕を引っぱりながら、ゆったり目のストロークで前を行く哉汰を、必死で制した。
「ちょ、待ってってば、藤宮くんっ!」
哉汰がそこでゆっくりと振り向いた。
「…っ」
甘さと鋭さが同居した、けぶったような眼差しが射止めてきて、柚は思わずたじろいだ。
呼びとめるんじゃなかった…;
ボワンと熱を上げた顔を慌てて俯かせると。
「…。」
足を止めた哉汰のブーツの先が、コツ、と乾いた音を立て、ゆっくりと自分の方へ向けられたのが分かった。