わかれあげまん
山頂の夜風がザワザワと杉木立をひとしきり吹き渡って行き。
哉汰の茶色の柔らかな髪もフワリと踊って。
それを合図のようにひたと会話を止め、哉汰が笑顔を掻き消した。
「・・・。」
押しつぶされそうな静寂の中、柚は目を見開いた。
少し苦しげに細まった彼の熱っぽい視線が、自分の顔の1点、尖らせたその唇に注がれているのに気付いたから。
途端脈打つように激しく、早く鼓動し始める、柚の胸。
吸い寄せられるように更にすっとその顔が近寄ってきたのが分かっても、柚はまだ固まったまま。