わかれあげまん
こんな消え方したあたしの事…心配してるかな。
怒ってるよね。
ごめんね?美也子。
落ち着いたら必ず連絡するから。
それから畔の途中で足を止め、山の向こうに隠れそうになる太陽を目を細め見やり。
藤宮くん…
そう心の中で小さく名前を呼んでみた。
“あんたの事が心配でたまらない”
端正な顔を歪め、そう言ってきた一昨日の夜の事。
あたしはきっと一生忘れない。
誰かを本気で好きになる、って、
こんなにも温かくて、
こんなにも切ない事だったんだって。
教えてくれて、ありがとうね。
ささやかな風にさえ揺れる、柔いアッシュブラウンの髪。
綺麗な黒曜石みたいな瞳で真っ直ぐにあたしを見てくれた。
いつも、血の通った、力強くて温かな、本音の言葉をくれた。
もう、二度と会う事はないけど。
でもあたし、ずっとずっと祈ってる。
あなたが幸せでありますように。
藤宮くん。