ライフ・フロム・ゼロ

世間体を気にしやすく、
友人が多い方ではない母が
愚痴を言える相手は多分私しかいない。

もしかしたら、
私を通して近くにいる
父に普段ぶつけられないことを
言っているだけなのかもしれないけど。


好きなだけ愚痴を吐き出すと、
母は、深い溜息をついた。


「………」


「あと、1000万円もあるのよ。借金。
 考えられる?私の人生ってなんなのかしら」
 

「…そうだね。私も、頑張って手伝うからね」


「辛いけど、仕方ないのよね…
 あ、もうこんな時間」


私は少しホッとして言った。


「うん、身体に気をつけてね」


「あなたもね。じゃあ…」


「はい。じゃあね」



電話を切ると、自然とため息が出た。

そのまま携帯をテーブルに置いて、
シャワーを浴びることにした。

薄暗くなってしまった気持ちを払拭したかった。
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