西野くんの偽カノジョ



あたしがリビングに戻ると西野くんが体温計を救急箱にしまっていた。



「体温計…使いっぱなしにしちゃってすみません。」


すっかり忘れてた。



ケースにもしまわないまま、西野くんの部屋に行っちゃったし。



「別に、それで結衣は何しに行ってたの?」



全然気にしてなさそうに言う西野くん。



「えっと…ごめんなさい!」



あたしは頭を下げて謝った。



この謝罪にはたくさんの意味がある。



逃げて帰ってしまったこと。



西野くんに黙ってバイトをしていたこと。



それから…あたしが体調を崩したばっかりに…昨日の西野くんの誕生日を祝えなかったこと。



「急に何なんだよ?分かるように説明して」



あたしはコクンと頷いた。


そして西野くんにリビングにあるソファーに促されると、西野くんの隣に座って


……ぽつりぽつりと小さな声であたしは話始めた。


< 292 / 355 >

この作品をシェア

pagetop