キミがいた夏~最後の約束~
真実




「私のお母さんは生まれつき体が弱くて…」


私は小さく深呼吸すると、昔を思い出すように静かに口を開いた


室内の静けさとは対照的に、外からは子供達の笑い声が遠くから聞こえてくる


そういえば、今日から夏休みなんだね



「……だから、お母さんは将来的に子供を産める体ではないって言われてたって…」



橘先輩も綾香もトビーさんも都さんも


みんな静かに耳を傾け聞いてくれている




「でもお母さんはお父さんと出会って…恋に落ちて…」



「…美鈴ちゃんが出来たわけね?」



都さんがやわらかな笑顔を向けながらそう言うから、
私はその言葉を聞いて少し笑って静かに頷いた



「お母さん、そんな体なのに迷わず私を産もうと思ってくれたって…」



お父さんが私によくそう聞かせてくれた



「私…それを聞いた時…本当にうれしかった~…」


そう言った私の顔見て、橘先輩もうれしそうな顔をする


私はその顔を一瞥して続けた



「でもね…周りには反対されたって、まあ当たり前だよね…
でも産むと決めたお母さんは、その決意を絶対曲げなかったって……」


「母は強しよ」


都さんがもう一度そう言う



「でもやっぱり無理だった…お母さんの体では出産には耐えられなかった…」



私は少し間を開けると、心を落ち着けるように息を小さくすった



「…お母さんは私を産んで間もなくして…死んでしまった…」



静かな部屋の空気がまたピンっとはりつめる



橘先輩と綾香を見ると二人は納得できないような顔をしていた



二人、同じ疑問を抱いたのだろう






< 154 / 378 >

この作品をシェア

pagetop